空の気配
間違っているつもりはない。だがおそらくは耳を貸されない。だから自分はいらいらし
ている。
大学のグラウンドを左手に、大山のふもと、斜面にあるこの土地では空に不自由しない。
風に押し広げられた雲の波が横長く放射状に払われて、あの形は間違いなく片翼だ。持ち主はまだ空の彼方で巨体を支え切れているのだろうか。自分の目は我が身の重さに耐える眼差しがどこかにないかと捜し回って結局諦めた。見えたことがないものを見つける気力は今の怒りに勝らない。自分が知っているのは破片ばかりだ。しかし本体が無ければそれが無いなどという莫迦げたことはない筈で、本体があるから破片ができる。まあ、破片を見つけた時には本体に疵があるということなのかもしれないが。
翼の欠けた女の子はさぞかし痛々しい姿であろう。その気配が地上の優しさを増しているのだとしても。
けれどもちろん夜空の女の子などは、うかつに翼を広げればただ星空の鑑賞を邪魔してしまうばかりなので、星空の夜の彼女らには翼は多分ないだろう。これで翼ありきなら女の子どうこう言う前にそれは天使とか神の使いとか呼ぶべきじゃないか、などという架空
の反論には対抗できる。なにやはり間違いはない、空の気配を支配しているのは女の子なのだと。
あの気配が女性の、女性となるのをどこかで夢想するものの気配でなかったら一体何なんだ。そうして、誰もそれを自明のことだと思っていないらしいのはどういうことなんだ。
まさかこの地上に空のない場所がある訳でもなかろうに。
自分は眼を閉じた。この土地に住んでいるのは空を広く眺めることが出来るからで……ここから電車で二時間半、都心へと出て、ビルの隙間からの空を、毎日観るような暮らしをしたら、この感覚は、果ててしまうのだろうかと、怯えたからだ。そうなったら自分は、空に女の子の気配がない理由を何だと思うのだろうな?
「空の女の子が居なくなるにはどうすればそうなるのかな」
独りごちて、答えはそのまま口から出た。
「きっと空から降りてきて、自分の蒔いた気配をむさぼり喰うのだな」
じゃあ、もう、あの女の子の気配を知らない人には女の子が降ってきたのだな。
空から。
http://q.hatena.ne.jp/1231366704
【降臨賞】空から女の子が降ってくるオリジナルの創作小説・漫画を募集します。
条件は「空から女の子が降ってくること」です。要約すると「空から女の子が降ってくる」としか言いようのない話であれば、それ以外の点は自由です。
字数制限 : 200〜1000 字程度
締め切り : 2009-01-12 18:00 で募集を止めます。
優勝賞品 : もっとも稀少な(と質問者が判断する)作品を書いてくださった方に 200 ポイントを贈ります。
ところでこういう書き方で応募したことになるのか。
とりあえず40字×28行でワードの文字カウントを信用して900字弱。